自社株の評価

自社株の評価が、
約60年ぶりに変わります。
残余利益方式のしくみと、
上がる会社・下がる会社。

2026年9月19日 公開 / 国税庁 有識者会議 第6回(国税庁案)までの内容で書いています。数字は今後変わります

会社の株には、値段があります。
上場していなくても、です。

社長が亡くなったとき。
子どもに株を渡すとき。
そのたびに、相続税や贈与税のために
「この会社の株は1株いくらか」を
計算してきました。

その計算のしかたが、
昭和39年から続いてきた方式から、
「残余利益方式」という
新しい方式に変わろうとしています。

国税庁の会議で議論の途中ですが、
骨組みはほぼ見えてきました。
何が変わるのか。
自分の会社は上がるのか、下がるのか。
順に整理します。

一何が変わるのか

いまの方式は、会社の規模で
計算のしかたが分かれています。

大きな会社は、
上場している同業の株価と比べる
「類似業種比準方式」。
小さな会社は、
会社の財産を時価で数え直す
「純資産価額方式」。
中くらいの会社は、その両方を
混ぜて使います。

新しい方式では、
この規模の区分がなくなります。
どの会社も同じ1つの式で計算します。

いまの方式と、新しい方式
いまの方式新しい方式(国税庁案)
使う数字上場会社の株価、
会社の財産の時価
直前期末の簿価純資産と、
過去5年の利益・配当
規模の区分大・中・小で
計算が違う
なし(全社同じ式)
元になる帳簿決算書法人税の申告書
(別表四・別表五(一))
計算の手間類似業種の株価を
調べる必要がある
申告書があれば
計算できる

国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第5回・第6回資料から。
少数株主向けの「配当還元方式」は、残すかどうか別に議論中です。

なぜ変えるのか。
国税庁の説明は、大きく2つです。

ひとつは、
規模が大きい会社ほど安く評価される
いまの仕組みが不公平だということ。

もうひとつは、
類似業種比準方式に
理論的な根拠がないということ。
上場会社の株価をなぞる方式は、
ほかの分野では使われなくなっています。

二残余利益方式のしくみ

名前は難しいですが、
考え方は1行で書けます。

簿価純資産に、
「株主の期待を超えた利益」を
5年分足す。

順番に見ていきます。

1.出発点は、簿価純資産

直前期末の純資産です。
土地や株の含み益は見ません。
帳簿の金額をそのまま使います。

いまの純資産価額方式は、
財産を1つずつ時価に直していました。
ここが大きく変わります。

2.株主が期待する利益を決める

株主は、会社にお金を置いている以上、
利回りを期待しています。
この期待の割合を
「還元率」と呼びます。

国税庁の試算では8%です。
純資産1億円の会社なら、
株主は年800万円の利益を
期待している、と見ます。

3.実際の利益と比べる

過去5年の利益の平均を出します。
土地の売却益や役員退職金のような
その年だけの損益は除きます。

その平均利益から、
さっきの「期待する利益」を引きます。
残った分が「残余利益」です。

利益が期待を上回っていれば、プラス。
下回っていれば、マイナス。

4.5年分を足して、少し割り引く

この残余利益を5年分、
簿価純資産に足します。
最後に「しんしゃく率」を掛けて
少し安全側に寄せます。
試算では0.7〜0.8倍です。

計算例 純資産1億円・年平均利益1,000万円・配当200万円・還元率8%
金額
簿価純資産1億円
5年分の残余利益(現在価値)+327万円
株主価値1億327万円
× しんしゃく率0.88,261万円

残余利益は年々小さくなります(利益を内部に貯めるほど純資産が増え、期待利益も増えるため)。
この例では5年目にマイナスに転じています。計算の途中は計算ツールで確認できます。

ポイントは、ここです。

利益が期待を下回る会社は、
簿価純資産より安くなります。

利益も配当もない会社は、
還元率8%なら、
簿価純資産の7割ほどになります
(しんしゃく率をかける前)。

国税庁資料の例:利益・配当ゼロの会社は、
純資産を100として、還元率2%で91、
5%で78、10%で62。
還元率が高いほど、
下がり幅が大きくなります。

三上がる会社、下がる会社

国税庁は、実際の申告データで
試算をしています。
令和2〜5年分の申告から
1,378社を無作為に選び、
新方式で計算し直したものです。

いまの申告評価額と比べた増減(中央値) 還元率8%・しんしゃく率0.8
区分増減下がる会社の割合
全体(1,378社)+2.3%48.6%
大会社(128社)+71.7%24.2%
中会社(820社)+12.1%42.2%
小会社(430社)▲21.8%67.9%

国税庁 有識者会議 第6回資料。しんしゃく率0.7なら、小会社は▲31.6%・下がる会社78.4%。
子会社株式の修正などの個別調整は入れていない試算です。

全体では、ほぼ横ばい。
でも中身は、まったく違います。

大きな会社は、上がります。
いままで類似業種比準で
安く計算できていた分が、
なくなるからです。

小さな会社は、7割近くが下がります。
小会社の利益率(ROE)の中央値は
0.6%。
還元率8%には、はるかに届きません。
残余利益がマイナスになり、
簿価純資産から引かれるからです。

では、自分の会社はどちらか。
目安は、こう見ます。

自社がどちら側か、ざっくり見る目安
会社の姿新方式では
純資産に対して利益が8%より少ない
(純資産1億円で利益800万円未満)
簿価純資産より下がる方向
純資産に対して利益が8%より多い簿価純資産より上がる方向
土地や株の含み益が大きい含み益を見なくなるので、
いまの純資産価額より下がりやすい
これまで類似業種比準の割合が大きかった
(大会社・中会社)
いまの評価額より上がりやすい

還元率8%は仮置きの数字です。決まると、この境目も動きます。

含み益の大きい不動産を持つ会社は、
いまの純資産価額方式では
評価が重くなりがちでした。
新方式では帳簿の金額で見るので、
そこが軽くなる可能性があります。

逆に、いままで
「うちは大会社だから安い」
と考えていた会社ほど、
上がり幅が大きくなります。

四いつから、何が決まっていないか

まだ、決まっていません。
ここは正直に書いておきます。

決まっていること・いないこと(2026年9月時点)
項目状況
残余利益方式に変えること国税庁案として提示。大きな異論なし
簿価純資産を使うこと同上
加算する期間(5年)同上
法人税申告書の数字を使うこと同上
還元率(8%?)未定。次回以降の会議で議論
しんしゃく率(0.7〜0.8?)未定。還元率と一緒に議論
役員報酬・退職金の補正のしかた方向だけ提示。割合は未定
配当還元方式(少数株主)を残すかこれから議論

国税庁 有識者会議 第6回資料の論点一覧から。

スケジュールは、
議論の内容を令和9年度の税制改正に
盛り込み、通達を改正して、
早ければ令和10年(2028年)から適用、
という見方が報じられています。

つまり、いま急いで株を動かす話では
ありません。
でも、あと1〜2年で計算のしかたが
根本から変わる、という話です。

五いま、できること

3つにまとめます。

1.自社の水準を、ざっくり掴む

純資産と、ここ数年の利益。
この2つが分かれば、
上がる側か下がる側かは見当がつきます。

計算ツールを置きました。
純資産・利益・配当をスライダーで
動かすだけの「かんたん版」と、
申告書の数字を期ごとに入れる
「詳細版」があります。

→ 非上場株式の評価額の目安
(yuta-hazama.jp/kabuka)
無料・登録不要。入力した数字は
こちらに送られません。

2.申告書を5期分、手元にそろえる

新方式で使うのは、
法人税の申告書の中の
別表四と別表五(一)です。
直前期から5期分。
決算書だけでは足りません。

顧問税理士がいる会社なら、
事務所に控えがあります。
「別表四と五(一)を5期分ください」
で通じます。

3.株を動かす予定があるなら、時期を考える

贈与や譲渡を考えている会社は、
いまの方式で評価するか、
新方式を待つかで、
税額が変わる可能性があります。

上がる側の会社は、いまのうちに。
下がる側の会社は、待つ選択肢も。

ただし、還元率が決まるまでは
境目が動きます。
「上がるか下がるか」の見当をつけて、
決めるのは数字が固まってからでも
遅くないと思います。

六よくある質問

うちは小さな会社です。関係ありますか?

あります。
むしろ小さな会社ほど、
評価額が動く割合が大きい試算です。
下がる会社が多いので、
悪い話ばかりではありません。

純資産価額方式はなくなるのですか?

原則の方式としてはなくなる方向です。
ただ、資産管理会社のような
「特定の評価会社」には
純資産価額を使う案が残っています。
新方式の評価額に上限(頭打ち)として
使うかどうかも議論中です。

計算ツールの数字は、申告に使えますか?

使えません。
残余利益方式は、まだ
財産評価基本通達に入っていません。
いまの申告は、いまの方式で行います。
ツールは「新方式ならどのくらいか」を
掴むためのものです。

赤字の会社の株は、ゼロになりますか?

ゼロにはなりにくいです。
残余利益がマイナスでも、
5年分しか引かないので、
簿価純資産の6〜7割あたりで
止まることが多いと思います。
純資産そのものがマイナスなら別です。

七この記事の根拠

このページは、次の資料を
2026年9月19日に確認して書いています。
会議が進んで内容が変わったときは、
このページも更新します。

還元率8%・しんしゃく率0.7〜0.8は、
国税庁が試算に使った仮の数字です。
「上がる・下がる」の目安も
その前提で私が整理したものなので、
数字が決まれば境目は動きます。

「うちは上がる側か、下がる側か」
「株を渡す時期を、どうするか」
純資産と利益の数字があれば、
見当はつきます。

LINEで、ひとこと聞いてみる公式LINE @yuta-hazama-tax

追加したあと、気になることを
ひとこと送ってください。
営業日中に、私からお返事します。
まだ決まっていなければ、
追加だけでも構いません。

申告書を5期分そろえて、
別表から数字を拾うところが、
いちばん手間のかかるところです。
そこを引き受けて、算定します。

自社株シミュレーション33,000円(税込)・報告書とZoom 30分の説明つき 相続税の目安家族構成と財産から、納める相続税の概算を出します

*相談してみる

自社株の評価や事業承継のご相談は、
顧問契約の前でも受けています。
二営業日以内に、私から返信します。

いまの状況

いただいた情報の取扱いはプライバシーポリシーのとおりです。

非上場株式の評価額の目安(計算ツール) 残余利益方式で試算。かんたん版はスライダーで、詳細版は申告書の数字から
← 読みものの一覧へ
LINEで聞いてみる無料・友だち追加 自社株の算定を頼む33,000円