相続した家と土地
2026年10月10日 公開 / 令和8年4月1日現在の法令で書いています
親が亡くなって、実家が残った。
住む人はいない。
売るしかないかもしれない。
そう考えたとき、
まず気になるのは
「売ったら、税金はいくらかかるのか」
だと思います。
結論から書きます。
売ると、相続税とは別に
所得税と住民税がかかります。
ただ、使える特例があれば
ゼロになることも少なくありません。
そして、売る時期で結果が変わります。
税理士の私の立場から、
順に整理します。
相続税は、親の財産にかかる税金です。
実家を売って利益が出ると、
それとは別に、売った人に
所得税と住民税がかかります。
利益の計算は、こうです。
ここが、いちばん誤解されるところです。
相続した家の「買った値段」は、
相続したときの評価額ではありません。
親が買ったときの値段を、
そのまま引き継ぎます。
建物は、そこから古くなった分を
差し引きます。
何十年も前に買った家だと、
買った値段の書類が
見つからないことがよくあります。
そのときは、売った金額の5%を
取得費にできます。
ただ、5%はかなり小さい数字です。
売買契約書、通帳、建築の請負契約書。
実家を片づけるときに、
捨てずに残しておいてください。
持っていた期間も、親から引き継ぎます。
親が買ってから5年を超えていれば
「長期」の扱いになり、
税率は所得税・住民税あわせて
20.315%です。
相続した家を売ったときの特例は、
主に2つあります。
両方は使えません。
有利なほうを選びます。
親がひとりで住んでいた家を
売ったときの特例です。
利益から最大3,000万円を引けます。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 建てた時期 | 昭和56年5月31日以前 |
| 住んでいた人 | 亡くなる直前に、 親がひとりで住んでいた |
| 相続したあと | 住む・貸す・事業に 使っていない |
| 売る期限 | 相続から3年後の 年末まで |
| 売る金額 | 1億円以下 |
| 建物 | 耐震の基準を満たすか、 取り壊す |
| 相続人が3人以上 | 控除は2,000万円まで |
マンション(区分所有の建物)は使えません。
老人ホームに入っていた場合も、条件を満たせば使えます。
令和6年以降に売った分は、売った翌年2月15日までに
買主が耐震改修や取り壊しをしても使えます。
令和9年12月31日までに売った分が対象です。
相続税を払った人が使える特例です。
払った相続税のうち、
売った財産にあたる分を
取得費に足せます。
そのぶん、利益が小さくなります。
期限は、
相続税の申告期限から3年以内。
相続税がかからなかった人は、
この特例は使えません。
古い家で、親がひとりで住んでいた。
それなら、まず空き家の特例を
確かめます。
控除が大きいので、
たいていはこちらが有利です。
マンション、新しい家、
家族と住んでいた家なら、
空き家の特例は使えません。
相続税を払っていれば、
取得費加算を使います。
ここが、いちばん大事なところです。
相続税には、
自宅の土地の評価を80%下げる
「小規模宅地等の特例」があります。
ただ、この特例は、
一緒に住んでいた家族や、
持ち家のない子(いわゆる家なき子)が
使う場合、
相続税の申告期限まで
その土地を持ち続けることが
条件です。
申告期限は、
亡くなったことを知った日の翌日から
10か月です。
それより前に売ってしまうと、
特例が使えなくなり、
相続税が大きく増えることがあります。
一方で、売るほうの特例には
期限があります。
| 時期 | 気をつけること |
|---|---|
| 〜10か月 | 相続税の申告。 小規模宅地等の特例を 使うなら、まだ売らない |
| 10か月〜 | 売ってよい時期。 相続登記を済ませておく |
| 〜3年後の年末 | 空き家の3,000万円控除の 期限 |
| 〜3年10か月 | 取得費加算の 期限 |
小規模宅地等の特例を使わない場合や、配偶者が相続する場合は、10か月より前に売っても構いません。
つまり、多くの場合、
申告期限のあと、3年以内が
売り時の目安になります。
不動産は、売ると決めてから
お金になるまで数か月かかります。
期限の直前に動き出すと、
間に合わないことがあります。
数字で見てみます。
父が昭和50年に建てた実家。
父がひとりで住んでいました。
相続人は子2人。
亡くなった翌年に、
建物を取り壊して
土地を2,000万円で売りました。
買った値段の書類はありません。
| 特例なし | 空き家の特例 | |
|---|---|---|
| 売った金額 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 取得費(5%) | −100万円 | −100万円 |
| 売る費用 | −80万円 | −80万円 |
| 特別控除 | — | −1,820万円 |
| 利益 | 1,820万円 | 0円 |
| 税金(20.315%) | 約370万円 | 0円 |
売る費用は、仲介手数料・取り壊し費用などの合計を80万円と置いた例です。
特別控除は最大3,000万円ですが、利益の額までしか引けません。
特例を使って税金がゼロでも、確定申告は必要です。
同じ家、同じ値段で、
約370万円の差です。
売る前に、要件に当てはまるか
確かめる価値があります。
家を売るには、まず名義を
親から相続人に変える必要があります。
これを「相続登記」といいます。
2024年4月から、
相続登記は義務になりました。
不動産を相続したことを知った日から
3年以内に申請します。
正当な理由なく怠ると、
10万円以下の過料の対象です。
2024年3月以前の相続で、
まだ名義が親のままの不動産も
対象です。
こちらは2027年3月31日までに
登記が必要です。
登記は司法書士の仕事です。
売ると決まってからでは遅れるので、
相続税の申告と並べて進めます。
相続した家のことは、
相談先が分かれがちです。
相続税は税理士に。
売るのは不動産会社に。
売った後の申告は、また税理士に。
でも、ここまで見てきたとおり、
いつ売るかは、
相続税の特例と、
売ったときの特例の
両方を見ないと決められません。
私は税理士で、
宅地建物取引士の試験にも合格しています。
相続税の申告から、売る時期の判断、
売った後の確定申告まで、
一つの窓口でご相談いただけます。
打ち合わせはオンラインで。
実家が遠くても、
ご来所なしで進められます。
売るか、貸すか、そのまま持つか。
迷っている方は、
事例で考え方を書いた記事
も読んでみてください。
売る前に、家を兄弟の共有で
相続しておくのが一般的です。
そうすると、売った利益も
持分ごとに分かれ、
それぞれが申告します。
空き家の特例も、
要件を満たせば各自で使えます。
税金はかかりません。
ただ、相続した家の売却損は、
給与など他の所得と
差し引きできないのが原則です。
相続したあと人に貸すと、
空き家の3,000万円控除は
使えなくなります。
貸すか売るか迷っているなら、
先にご相談ください。
このページは、次の資料を
2026年10月10日に確認して書いています。
計算例の数字(売る費用80万円など)は、
分かりやすくするために置いたものです。
実際の税額は、取得費や費用の内訳で
変わります。
「うちの実家は、特例が使えるか」
「いつ売るのがいいか」
家の建った年と、誰が住んでいたか。
それだけ分かれば、見当はつきます。
追加したあと、気になることを
ひとこと送ってください。
営業日中に、私からお返事します。
まだ決まっていなければ、
追加だけでも構いません。
相続税の申告も、
売るかどうかの判断も、
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