相続の事例 二
2026年10月12日 公開 / 令和8年4月1日現在の法令で書いています
実際のご相談をもとに、
家族構成や数字を変えています。
父が亡くなったとき、
「とりあえず母が全部相続して、
母が亡くなったときに
子で分ければいい」
と考えるご家族は多いです。
配偶者には、相続税を
大きく減らす制度があります。
だから、今回の税金はゼロにできます。
ただ、母が亡くなったときの相続
(二次相続といいます)まで
合計すると、
税金が約2倍になることがあります。
税理士の私なら、こう考えます。
父が亡くなりました。
相続人は、母と、子2人です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 父の財産 | 自宅・預金など あわせて1億円 (評価後の額) |
| 母 | 70代。自宅に住み続ける。 自分の預金が2,000万円 |
| 子 | 2人とも独立。 別に住んでいる |
| ご家族の希望 | 母の生活を守りたい。 税金は少ないほうがいい |
母は「私が全部もらって、
あとで子に残せばいい」。
子は「それでいいけど、
税金はどうなるのか」。
そこで、ご相談がありました。
分け方は、大きく3つです。
配偶者には「配偶者の税額軽減」
という制度があります。
1億6,000万円か、
法定相続分(この事例では半分)の
どちらか多い額までは、
配偶者に相続税がかかりません。
だから「一」を選べば、
今回の相続税は0円です。
ここで話が終わりがちなのですが、
終わらせないほうがいいと思います。
結論から書きます。
私なら、母が生活に必要な分を
先に決めて、残りは子に渡します。
この事例なら「二」に近い分け方です。
理由は3つです。
母が全部相続すると、
母の財産は1億2,000万円になります。
母が亡くなったとき、
相続人は子2人だけ。
配偶者の軽減はもう使えません。
そのときの相続税は、
約1,160万円です。
今回ゼロにした分が、
そっくり次に回ってきます。
しかも、税率が上がって
増えて戻ってきます。
半分ずつなら、
今回と次回をあわせて
約635万円。
差は約525万円です。
数字だけなら、
子が全部相続するのが
いちばん安くなります。
今回630万円、次回0円です。
それでも、私はすすめません。
母の手元に、自由に使えるお金が
なくなるからです。
施設に入る、家を直す、
病気になる。
そのたびに子に頼むのは、
母にとって気の重いことだと思います。
税金を5万円減らすために、
母の安心を減らす。
その順番は違うと思っています。
母が住み続ける自宅は、
母が相続するのが自然です。
配偶者が自宅の土地を相続すると、
条件なしで「小規模宅地等の特例」が
使え、評価を80%下げられます。
ですから「二」といっても、
きっちり半分ではありません。
自宅と、生活に必要な預金は母。
残りの預金は子。
そういう分け方になります。
「今回はゼロ」は魅力的です。
でも、母の相続のときに
子2人で1,160万円を払います。
そのとき、財産の多くが自宅なら、
払うお金が足りなくなることも
あります。
「母が長生きして使うから減る」
という考えもあります。
確かにそうですが、
70代の方が1億円を
使い切ることは、まずありません。
上に書いたとおりです。
安いけれど、
母の生活を子が支える前提になります。
ご家族がそれでよいなら
選べますが、
私からはすすめません。
3つの分け方を、
二次相続まで合計で並べます。
母の財産は、
父から相続した分に
自分の預金2,000万円を足しています。
| 母が全部 | 半分ずつ | 子が全部 | |
|---|---|---|---|
| 今回 (父) | 0 | 315 | 630 |
| 次回 (母) | 1,160 | 320 | 0 |
| 合計 | 1,160 | 635 | 630 |
父の財産1億円、相続人は母と子2人(基礎控除4,800万円)。母の財産は父から相続した分+2,000万円、相続人は子2人(基礎控除4,200万円)として、速算表で計算しています。
今回の税額は、配偶者の税額軽減で母の分をゼロにしたあとの、子が払う額です。
母が亡くなるまでに使った分や、贈与した分は考えていません。実際にはその分だけ次回の税額が減ります。
「母が全部」と「半分ずつ」の差は、
約525万円。
「半分ずつ」と「子が全部」の差は、
5万円です。
この5万円の差なら、
母の安心のほうを取ります。
525万円の差なら、
分け方を考える価値があります。
この事例は「半分ずつに近い形」でした。
でも、答えは家ごとに違います。
父の財産が4,000万円なら、
基礎控除の範囲なので
今回も次回も税金はかかりません。
母が全部で構いません。
逆に財産が3億円なら、
母の相続で税率が40%を超えます。
子に多く渡すほうが、
差はもっと大きくなります。
それから、配偶者の税額軽減は
申告しないと使えません。
「ゼロだから申告しない」は
できないので、ご注意ください。
大事なのは、
今回の税金だけで決めないことです。
母の生活費、次回の税金、
自宅をどうするか。
並べてから、ご家族で決めればいい。
私はそう思っています。
このページは、次の資料を
2026年10月12日に確認して書いています。
表の数字(財産1億円、
母の預金2,000万円)は、
分かりやすくするために置いたものです。
実際の税額は、財産の内訳と
評価で変わります。
「うちは、母が全部でいいのか」
財産のおおよその額と、
母の預金、自宅に誰が住むか。
それだけ分かれば、見当はつきます。
追加したあと、気になることを
ひとこと送ってください。
営業日中に、私からお返事します。
まだ決まっていなければ、
追加だけでも構いません。
今回の申告も、
次の相続を見据えた分け方も。
一つの窓口で、オンラインで。
相続のご相談は、
オンラインで全国から受けています。
二営業日以内に、私から返信します。